中瀬 卓 先生(2014年度 熊本大学卒業)

 みなさん、こんにちは。地域医療機能推進機構 熊本総合病院 脳神経内科の中瀬卓です。私は、大阪府豊中市の出身で大阪府立北野高等学校を卒業し、2009年に熊本大学医学部医学科に推薦入試で合格しました。当時は、地域枠の推薦入試はありませんでした。大阪府出身ではありますが、地域での患者さんの人生に寄り添った医療に興味がありましたので、入学後に熊本県医師修学資金の貸与を受けることを希望しました。修学資金の制度が始まったのは2009年度からですので、貸与を受けた第1期生ということになります。

 その後は、2015年に熊本大学を卒業し、熊本大学医学部附属病院、熊本総合病院のたすき掛けのプログラムにて初期臨床研修を行いました。2017年に熊本大学医学部附属病院脳神経内科に入局し、同院で1年間の後期研修を行った後に、2018年度より当院で勤務しています。熊本総合病院は、内科系、外科系ともに診療科がそろっており八代地域の医療を担う総合病院として、幅広い分野の症例に対応しています。また、脳神経内科領域では、急性期脳梗塞に対してrt-PA静注療法を施行しており、血管内治療の適応がある症例に関しては熊本市内の病院と連携し、ヘリ等で搬送の上、血管内治療を施行しています。このように将来、専門として希望する診療科について、十分な経験を積むことができる環境で勤務を行うことができています。

 都市部から離れた地域での医療というと総合診療科をイメージされる方も多いと思います。私も医学部の入学前には、内科・外科を含めてあらゆる分野に対応することができる医師が必要とされているというイメージを持っていました。しかしながら、学生時代に夏季地域医療実習(熊本県医師修学資金の貸与を受けている熊大生、および熊本県出身の自治医大生を主な対象として、毎年、夏に熊本県内の各地で行われている実習)に参加させて頂き、フィールドワークにて地域住民の方々の意見を伺うと、プライマリケアを扱う総合診療医に加えて、内科または外科の専門領域を持ち総合診療ができる医師も必要とされていることを強く感じました。地域の病院を対象にして行われた望まれる医師像のアンケート結果でも、同様の傾向がみられました。そのため、私は学生時代から興味のあった脳神経内科に入局し、脳神経内科をスペシャリティーとした内科全般を診ることができる医師を目標とし、日々の診療に従事しています。

 熊本県医師修学資金の貸与を希望される熊大生、推薦入試(地域枠)の受験を検討している受験生の中には、貸与を受けていない一般的な卒業生と比較し、卒業後の進路に関してどのような違いがあるのか不安に感じている方も多いと思います。修学資金の返済が免除されるためには、初期臨床研修、1年間の後期研修に加えて、熊本県医師修学資金貸与医師の勤務等に関する要綱で定められた第1~第3グループの病院で、各グループにおいて2年間の勤務を行う必要があります。熊本総合病院は第1グループに含まれており、現在も義務年限を消化しながら勤務を行うことができています。修学資金の貸与を受けていた医師は、基本的には入局先の医局、県、本人の間で勤務先の調整を行うこととなっています。私の場合は、脳神経内科医局、熊本県の方々に配慮して頂き、将来的に脳神経内科専門医の取得ができるような勤務先の調整を行っていただいております。今後、様々な科に入局を希望される方が出てくると思われます。熊本県医師修学資金の制度には、診療科についての制限はありません。グループの中に、各々の診療科の関連病院が含まれていないことも考えられます。可能な限り早期に専門医資格の取得ができるよう、熊本県の方々と意見交換をしていきながら、より良い制度作りに関わることができればよいと考えています。熊本県の地域医療に貢献できるように努力していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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