高校生の皆様へ

医学生、研修医等へのインタビュー

熊本大学医学部附属病院地域医療・総合診療実践学寄附講座の主催で、毎年開催される夏季地域医療特別実習に参加した学生(5年生)の皆さんのレポートです。

平成30年度は8月16日から18日まで、水俣・芦北地域で実施されました。


熊本大学医学部5年 Yさん

1.自己目標・学び
 実習に際して、自己目標として①水俣病について知る②芦北町の抱える課題と対策を考えるの2つを掲げた。

➀ 事前学習に加えて、初日に訪問させていただいた水俣病資料館や水俣病情報センター、語り部の方のご講話が、水俣病に対する理解と考察を深めてくれた。当時の社会背景を考えると、水俣病を一企業が引き起こした公害の一言で片付けるのはあまりにお粗末だと感じた。水俣病の方々の高齢化が進んでいて、私の生きているうちに、"水俣病の人が居ない時代"が訪れるかもしれない。しかし、それは水俣病が歴史から消えたことを意味しない。このような悪夢を繰り返さないために、水俣病についての正しい知識を後の世代に伝えていく責務を医師は担っていると私は思う。

② 2日目のフィールドワークで、芦北町内の町役場やデイサービスセンター、診療所などを訪問させていただいた。自身で見て、歩いて、話してみることで、芦北町が直面している介護現場や少子高齢化の現実が浮き彫りになった。初めて訪れる土地ではあったが、私なりの問題意識を持ちながら芦北という地域を見つめることが出来たと自負している。対策についてあれこれ考えてみたが、結局のところ、単なる標語で終わらせずに実際に行動することが求められていると思う。

2.地域に求められる医師像
 これまでの実習でいくつかの地域を訪問したが、各々の地域によって立地や疾患割合が違い、それに伴い抱える問題も当然違う。地域の特性に精通していて、地域住民のニーズに応えられる医師が求められると考えている。

3.感想
 5年生の私にとって、今回は最後の実習であった。学年が上がるごとに、私の地域医療に対するモチベーションも上がってきている。以下は私の愚察であるが、学生時代は、都会の大病院で働いたり、海外留学をしたりといった華やかなキャリアに憧れる人が多いのではないだろうか。地域医療は一見地味に見える。しかし実際に足を運んでみると、地域に愛され、必要とされる、非常にやりがいのある仕事であることがわかる。神の手と称されるスーパードクターに憧れて外科医を目指す人は多い。ノーベル賞受賞者に憧れて研究医を目指す人も多い。私が地域でいきいきと働く姿を見て、地域医療を志す人が増えるようにこれからも精進しようと思う。今回の実習を実現してくださった皆様に心より感謝申し上げる。

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自治医科大学医学部5年 Eさん

1 当初の実習に関する自己目標
 ①水俣病について学び、課題とその改善策を考える。
 ②フィールドワークで伺った津奈木町の課題とその改善策を地域包括ケアの視点で考える。
 ③学生間で交流を深める。

2 実習を通して経験し学んだこと
 自己目標①については1日目に水俣病資料館での語り部の方の講話や、水俣病に関わっていらっしゃる行政の方、国立水俣病総合研究センターの医師の講話を聴き、水俣病になる原因、その時の水俣の社会背景、加害者・被害者・国・県の複雑な関係性、そして今の課題について改めて学習することができた。

 自己目標②については2日目のフィールドワークで津奈木町の町役場、特別養護老人ホーム「あけぼの苑」、介護予防事業所「たっしゃか塾」、つなぎ美術館に行かせていただいた。
 津奈木町役場では、町で取り組んでいる保健予防活動、また社会福祉協議会の組織・活動状況について詳しいお話を聞くことができた。印象に残ったことは、津奈木町の特定健診受診率が平成25年度から平成28年度まで大幅に上昇しており、その背景にはがん検診を5年ごとで無料化し町が負担するようにしたり、過去3年の受診率を見て1回でも受診しているなどの少し働きかければ受診してくれそうな方に電話や通知を出す取り組みをされたりしていることである。データからどのように住民に働きかけたら町全体の健康維持や津奈木町で問題となっている高額医療費の削減など様々な問題点を解決できるか真摯に取り組まれていることを知ることができた。

 介護予防事業所「たっしゃか塾」では社協の1つとして運営されており、週に1度同じ地区に住む方々が集まり、一緒に運動したり、季節にあった栄養指導を受けたりと住民の方が交流しながら楽しく頭の体操や運動されていることを見学できた。その運動を一緒にさせていただいたが運動器具の使い方やリズムに合わせて行う運動のやり方など優しく教えてくださり、自主的に活動されている姿が印象的だった。特養のあけぼの苑では、施設内でリハビリという仰々しい名前で運動してもらうのではなく、食堂に行く際に歩いたりゲームという形で運動できるように工夫がなされていた。また、認知症の方が徘徊して疲れたときに休めるようにところどころ廊下に椅子が置かれており、徘徊しないように押さえつけるのではなく、自由に行動できるような環境作りもなされていた。また、個室では今まで自宅で生活していた時と同じような空間で生活してもらうために部屋の片づけを推進するのではなく、自宅と同じように家具や物を配置したりと自由に持ち込みをしてもらっているのも印象に残った。

 地域包括ケアシステムの視点で見ると、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるように、包括的及び継続的な支援を行うことが目的であり、高齢者の相談窓口を設置して相談・支援を行ったり、支援が必要な方に対して、介護・生活のこと、保険、福祉、健康、医療について一緒に考えたり、保健師・社会福祉士・ケアマネージャーを中心として、高齢者とその家族を支援していることが分かった。

 自己目標③については、3日間を通して普段接点のない将来地域で一緒に働くかもしれない学生同士で交流することができてよかった。

3 実習を通して地域で求められる医師像についての考察
 地域の特性を知り、イベントに参加したり住民の方と交流したり、住民の方がどのような考えをもって生活されているのか知ることで、医師としての関わり方が変わってくるのではないかと感じた。まずはその地域を知ることから始めたいと思う。また、今回の実習で一番に感じたこととして、医師だけではより良い医療は提供できないということが挙げられる。保健師、社会福祉協議会、ケアマネジャーなど行政、福祉、医療、介護の面で多職種の連携が大切であると感じた。医師の方から積極的にかかわる姿勢を身に付けることが大事だと思う。それは住民の方に対しても同じで、自ら会いに行く姿勢を持ちたいと考える。

4 実習の感想
 水俣は小学生の社会科研修以来の訪問で水俣病について改めて学習することができた。水俣病で今でも苦しんでいらっしゃる方、偏見が未だに存在することなど、課題があることが見えてきた。私ができることは、そのような方に寄り添い、話を聞くことであったり、偏見を持つ人には水俣病について知ってもらうということであると考えている。フィールドワークでは、少人数で密度の濃い実習ができた。地域包括ケアシステムの一部を見せていただいて、関わっておられる方の努力を感じることができて自分もそのような立場になっていきたいと感じた。最後になりましたが、長い時間をかけて今回の実習の企画・準備をしてくださった、地域医療・総合診療実践学寄附講座の皆様、フィールドワークで伺った津奈木町の皆様、関係者の皆様、本当にありがとうございました。

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熊本大学医学部5年 Oさん

 今回の実習先が水俣・芦北地区と聞いて真っ先に思い浮かんだのは水俣病であったが、これまで熊本で医学を学びながらも、水俣病について深く学習する機会はなかった。そこで自己目標を、水俣病を学ぶことを通して、水俣の地域を知ること、特に水俣の医療の現状と課題について理解することとした。事前の地域医療ゼミで水俣病について学習し、初日の資料館で講話をお聞きし、翌日のフィールドワークでも水俣病関連施設を回らせていただいたことで、3日間で水俣病を多角的な視点から知ることができたように思う。

 事前課題の中で、水俣病と熊本大学の関わりを調べるというテーマがあったが、実習先では、原田正純先生のお名前を何度もお聞きした。原田先生は、水俣に何度も足を運び、患者さんのために生涯を通じて献身的な活動をされた偉大な先生である。水俣病を研究された業績はもちろんであるが、有効な治療法が無い中でも最後まで患者さんに寄り添うという姿勢こそ、何よりも大切なのではないかと思う。このことは、終末期医療にも当てはまると考えることができ、有効な治療が提供できなかったら医師としての役割が無い、というわけではなく、患者さんに寄り添うことこそが大きな支えになることがある、ということを学ぶことができた。原田先生のように地域住民に頼られ、そして心に残っていく医師が理想の医師像ではないかと考えた。

 今回の実習を通して「現場を知る、現場から学ぶ」ことの重要性を改めて認識することができた。今回の実習の学びは、水俣に足を運んだからこそ得られたことがほとんどである。実際に水俣に行く前と後では、水俣という地域や水俣病、水俣病患者さんについて違った印象をもった。インターネットで調べた事前学習の段階よりも、実際に資料館を見学し、講話を聞き、患者さんとお会いすることで、水俣病がもたらした罪の深さ、水俣地域社会の崩壊、患者さんの苦しみを痛感した。そして、知らないことで偏見をもつ可能性があること、「差別が公害を生んだ」という語り部さんの言葉を忘れてはならないと思う。特に、小児性・胎児性水俣病患者さんが、夢を諦めなければならなかったことをお話してくださったときの表情は、忘れることはできない。水俣病は60年以上経った今でもこうして私達にたくさんの教訓を教えてくれたが、「水俣病は終わっていない」ということを今回の実習を通して改めて知ることができた。

 また、今回の実習では何度も高齢化というテーマがあがった。高齢化問題に直面している、というが、行政の方や病院スタッフの方から直接お話を伺うことで、切実な課題であることを実感することができた。高齢化が進む地域社会の中で、お年寄りの方も安心して暮らしていけるような医療を提供するためにも、医療従事者同士はもちろん、行政とも連携しながら、地域住民の声に耳を傾けることの重要性が分かった。

 また、実習前まで私は地域包括ケアが具体的によく理解できない部分があったが、実習中に外部講師セッションやフィールドワークの中でイメージをつかむことができ、大変勉強になった。フィールドワークの中では、介護する側も高齢化しており、医療機関を受診する際の足がない、在宅医療を勧めても往診できる先生が少ない、医師の診療科偏在などの課題を耳にした。

 また、医師が患者さんに最も近い存在であるとは限らないため、病院スタッフ、介護施設や支援施設で働くスタッフをはじめ様々な職種の方々と連携をとることが重要であるとも伺った。そのため、地域医療に従事するにあたり、その地域のことはもちろん、患者さん個人・家族の背景まで考えられるような医師が求められると思う。

 早いもので今年は最後の夏季実習となったが、今回は今までの実習の中でも特に実りの多い実習だったように思う。初めて最上級生としてグループリーダーを任され、今までの実習とは置かれた立場の違う、緊張感のある3日間であった。必然的にリーダーシップ、コミュニケーション力、プレゼン力などが要求されるが、まだまだ自分には足りないと痛感させられた3日間でもあった。また、今まで当たり前のように参加してきたこの実習が、本当にたくさんの方々の支えがあって成り立つものであるのかを改めて実感することができた。実習を通して学び、考えたことをこれからしっかり行動にうつしていけたらと思う。最後に、この実習に御協力いただきました全ての皆様に感謝申し上げます。

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熊本大学医学部5年 Mさん

1)当初の実習に関する自己目標と、実習を通して学んだこと

 当初の実習の関する自己目標は、①水俣の地域を知る②地域包括ケアの現場を知る③地域での医師の働き方を知る、の3つであった。初日では、水俣病資料館の見学また講話を通して水俣病について理解を深めることができた。水俣病は大学の講義でもあまり取り扱われることがなく、医療者としても熊本県民としても十分な知識がなかった。水俣病に関して特に印象深かったことは、水俣病を引き起こす原因の会社となったチッソが水俣市から誘致されて水俣の地に設立したということである。教科書では水俣病の原因となった会社はチッソであるという簡潔な文章で表らされることが多く、地域に求められていないと文面上感じていたが、本来水俣に求められてできた会社が事件を起こしたと知り、水俣病に関する印象を大きく変わった。
 二日目のフィールドワークでは、水俣市の中山間地域を見学した。その中でも水俣市で行っているまちかど健康塾という介護予防の取り組みに興味を持った。地域住民が集まり、認知症予防のための問題を解き、ストレッチ等を行っていた。大学の実習では、治療面しか取り上げられないので地域包括ケアの治療面以外を体験することができ、医療の幅が広がった。

2)実習通して地域で求められる医師像について考察したこと

 今回の実習では、まちかど健康塾、久木野診療所、愛林館、くぎのの里を見学したが、どの施設でも地域の繋がりを大切にしており、自然と地域住民が集まれる取り組みを行っていた。地域の繋がりが大切だと感じたので、積極的に参加して住民とコミュニケーションをとることが必要であると思った。医師として参加するのではなく、地域に住んでいるので一住民として参加する方が、信頼関係を築きやすいのではないかと思った。また、地域の医師として働く中で介護、福祉の知識は必須だと感じた。治療した患者をスムーズに回復に向かわせるためにそのような制度を効果的に用いることが今後重要になってくると思った。医師に対して介護、福祉に関することを意見しづらいと言う声をたびたび聞いたので、ある程度学習しておけばもっと円滑なコミュニケーションがとれると思った。地域の診療所では、プライマリー領域はある程度自分で治療でき、それ以外の疾患の場合中枢病院にコンサルトできる判断力が求められると感じた。すべてを自分で診療するのではなく、患者の状態と自身の能力を鑑みて患者に有益になる判断をすることを身に付けようと思った。

3)実習の感想

 今年は最上級生としての参加だったので、例年になく実習に対する意識が高まっていた。ある程度病気を学び、病院実習も行っているので、低学年時とは異なった視点で実習を行うことができた。特に今回の実習では地域包括ケアの重要性を強く感じた。実習前にも地域包括ケアの講義は何度かあったが、実際自分の仕事にどのように関係してくるのか理解できていなかった。私は病気を主に勉強していたため、患者をいかに治療してくかが関心の中心であった。今回フィールドワークを行い、様々な業種の方の取り組みや地域生活を体験することで、医療において治療は一部分を担っているだけで、患者の健康には多くの取り組みが必要不可欠でしかないと感じた。学生の間にこのような視点を得ることができたのは幸いだと思う。

今回の夏季地域医療特別実習実施にご尽力いただいた多くの方に感謝したい。

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熊大医学部1年生(熊本県医師修学資金受給者)及び自治医科大1年生

 私たちは、今年度から地域医療システム学寄附講座の支援を受けて、地域医療について学ぶ1年生です。熊本大学から9名、自治医科大学から2名が加わりました。将来、熊本県内の医師不足の地域で働くため、熊本の医療の現状について学んでいる真っ最中です。入学して、まだ5ヶ月ではありますが、熊本県内の医師の偏在という課題に向き合い、どうすれば熊本で暮らす全ての方々に医療を届けることができるか考えています。

 将来、熊本の地域医療に携わりたいと考えている高校生の方には、ぜひその想いを明確に強くもちながら勉強など頑張ってほしいと思います。

 私たちはまだまだ未熟でこれから多くのことを学んで身につけていかなければなりませんが、大学で得たものを近い将来熊本で暮らす方々に還元できるよう精進していきたいと思います。これから、よろしくお願いします。

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