熊本大学医学部5年 Mさん

1)当初の実習に関する自己目標と、実習を通して学んだこと

 当初の実習の関する自己目標は、①水俣の地域を知る②地域包括ケアの現場を知る③地域での医師の働き方を知る、の3つであった。初日では、水俣病資料館の見学また講話を通して水俣病について理解を深めることができた。水俣病は大学の講義でもあまり取り扱われることがなく、医療者としても熊本県民としても十分な知識がなかった。水俣病に関して特に印象深かったことは、水俣病を引き起こす原因の会社となったチッソが水俣市から誘致されて水俣の地に設立したということである。教科書では水俣病の原因となった会社はチッソであるという簡潔な文章で表らされることが多く、地域に求められていないと文面上感じていたが、本来水俣に求められてできた会社が事件を起こしたと知り、水俣病に関する印象を大きく変わった。
 二日目のフィールドワークでは、水俣市の中山間地域を見学した。その中でも水俣市で行っているまちかど健康塾という介護予防の取り組みに興味を持った。地域住民が集まり、認知症予防のための問題を解き、ストレッチ等を行っていた。大学の実習では、治療面しか取り上げられないので地域包括ケアの治療面以外を体験することができ、医療の幅が広がった。

2)実習通して地域で求められる医師像について考察したこと

 今回の実習では、まちかど健康塾、久木野診療所、愛林館、くぎのの里を見学したが、どの施設でも地域の繋がりを大切にしており、自然と地域住民が集まれる取り組みを行っていた。地域の繋がりが大切だと感じたので、積極的に参加して住民とコミュニケーションをとることが必要であると思った。医師として参加するのではなく、地域に住んでいるので一住民として参加する方が、信頼関係を築きやすいのではないかと思った。また、地域の医師として働く中で介護、福祉の知識は必須だと感じた。治療した患者をスムーズに回復に向かわせるためにそのような制度を効果的に用いることが今後重要になってくると思った。医師に対して介護、福祉に関することを意見しづらいと言う声をたびたび聞いたので、ある程度学習しておけばもっと円滑なコミュニケーションがとれると思った。地域の診療所では、プライマリー領域はある程度自分で治療でき、それ以外の疾患の場合中枢病院にコンサルトできる判断力が求められると感じた。すべてを自分で診療するのではなく、患者の状態と自身の能力を鑑みて患者に有益になる判断をすることを身に付けようと思った。

3)実習の感想

 今年は最上級生としての参加だったので、例年になく実習に対する意識が高まっていた。ある程度病気を学び、病院実習も行っているので、低学年時とは異なった視点で実習を行うことができた。特に今回の実習では地域包括ケアの重要性を強く感じた。実習前にも地域包括ケアの講義は何度かあったが、実際自分の仕事にどのように関係してくるのか理解できていなかった。私は病気を主に勉強していたため、患者をいかに治療してくかが関心の中心であった。今回フィールドワークを行い、様々な業種の方の取り組みや地域生活を体験することで、医療において治療は一部分を担っているだけで、患者の健康には多くの取り組みが必要不可欠でしかないと感じた。学生の間にこのような視点を得ることができたのは幸いだと思う。

今回の夏季地域医療特別実習実施にご尽力いただいた多くの方に感謝したい。

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