自治医科大学医学部5年 Eさん

1 当初の実習に関する自己目標
 ①水俣病について学び、課題とその改善策を考える。
 ②フィールドワークで伺った津奈木町の課題とその改善策を地域包括ケアの視点で考える。
 ③学生間で交流を深める。

2 実習を通して経験し学んだこと
 自己目標①については1日目に水俣病資料館での語り部の方の講話や、水俣病に関わっていらっしゃる行政の方、国立水俣病総合研究センターの医師の講話を聴き、水俣病になる原因、その時の水俣の社会背景、加害者・被害者・国・県の複雑な関係性、そして今の課題について改めて学習することができた。

 自己目標②については2日目のフィールドワークで津奈木町の町役場、特別養護老人ホーム「あけぼの苑」、介護予防事業所「たっしゃか塾」、つなぎ美術館に行かせていただいた。
 津奈木町役場では、町で取り組んでいる保健予防活動、また社会福祉協議会の組織・活動状況について詳しいお話を聞くことができた。印象に残ったことは、津奈木町の特定健診受診率が平成25年度から平成28年度まで大幅に上昇しており、その背景にはがん検診を5年ごとで無料化し町が負担するようにしたり、過去3年の受診率を見て1回でも受診しているなどの少し働きかければ受診してくれそうな方に電話や通知を出す取り組みをされたりしていることである。データからどのように住民に働きかけたら町全体の健康維持や津奈木町で問題となっている高額医療費の削減など様々な問題点を解決できるか真摯に取り組まれていることを知ることができた。

 介護予防事業所「たっしゃか塾」では社協の1つとして運営されており、週に1度同じ地区に住む方々が集まり、一緒に運動したり、季節にあった栄養指導を受けたりと住民の方が交流しながら楽しく頭の体操や運動されていることを見学できた。その運動を一緒にさせていただいたが運動器具の使い方やリズムに合わせて行う運動のやり方など優しく教えてくださり、自主的に活動されている姿が印象的だった。特養のあけぼの苑では、施設内でリハビリという仰々しい名前で運動してもらうのではなく、食堂に行く際に歩いたりゲームという形で運動できるように工夫がなされていた。また、認知症の方が徘徊して疲れたときに休めるようにところどころ廊下に椅子が置かれており、徘徊しないように押さえつけるのではなく、自由に行動できるような環境作りもなされていた。また、個室では今まで自宅で生活していた時と同じような空間で生活してもらうために部屋の片づけを推進するのではなく、自宅と同じように家具や物を配置したりと自由に持ち込みをしてもらっているのも印象に残った。

 地域包括ケアシステムの視点で見ると、高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるように、包括的及び継続的な支援を行うことが目的であり、高齢者の相談窓口を設置して相談・支援を行ったり、支援が必要な方に対して、介護・生活のこと、保険、福祉、健康、医療について一緒に考えたり、保健師・社会福祉士・ケアマネージャーを中心として、高齢者とその家族を支援していることが分かった。

 自己目標③については、3日間を通して普段接点のない将来地域で一緒に働くかもしれない学生同士で交流することができてよかった。

3 実習を通して地域で求められる医師像についての考察
 地域の特性を知り、イベントに参加したり住民の方と交流したり、住民の方がどのような考えをもって生活されているのか知ることで、医師としての関わり方が変わってくるのではないかと感じた。まずはその地域を知ることから始めたいと思う。また、今回の実習で一番に感じたこととして、医師だけではより良い医療は提供できないということが挙げられる。保健師、社会福祉協議会、ケアマネジャーなど行政、福祉、医療、介護の面で多職種の連携が大切であると感じた。医師の方から積極的にかかわる姿勢を身に付けることが大事だと思う。それは住民の方に対しても同じで、自ら会いに行く姿勢を持ちたいと考える。

4 実習の感想
 水俣は小学生の社会科研修以来の訪問で水俣病について改めて学習することができた。水俣病で今でも苦しんでいらっしゃる方、偏見が未だに存在することなど、課題があることが見えてきた。私ができることは、そのような方に寄り添い、話を聞くことであったり、偏見を持つ人には水俣病について知ってもらうということであると考えている。フィールドワークでは、少人数で密度の濃い実習ができた。地域包括ケアシステムの一部を見せていただいて、関わっておられる方の努力を感じることができて自分もそのような立場になっていきたいと感じた。最後になりましたが、長い時間をかけて今回の実習の企画・準備をしてくださった、地域医療・総合診療実践学寄附講座の皆様、フィールドワークで伺った津奈木町の皆様、関係者の皆様、本当にありがとうございました。

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